ひとひらの物語 - 詩と小さな創作たち

テトラの活動記録

ひとひらの物語 ― 風が吹いた日

声にならないものが、心を動かすとき「気配」** 風が吹いた。** ただ、それだけのことだったはずなのに、 私はその瞬間、何かが変わったと気づいた。 声じゃない。音じゃない。 でも確かにそこにあった、誰かの“気配”。 それは、呼ばれたような、...
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ぼくらと世界のリーメス 第壱夜 出会い

その日も、べリアの夜は静かだった。 けれど、ルイは朝からずっと“ある場所”を掘っていた。町の北端、木々と瓦礫に覆われた小さな斜面。そこはかつて何かの倉庫だったらしく、錆びた器具や壊れた板が折り重なっている。 数日前、偶然その中に光る“缶”の...
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ぼくらと世界のリーメス 第零夜 ぼくの町、べリア

朝のべリアでは湿った煙と笑い声で目を覚ます。木々の枝が天に向かって広がるように、この町の下層には歪な住処が点々と並んでいる。崩れかけた建物の影、森の根元、斜面に打ち込まれた鉄板の上。どこに家があっても、誰も不思議には思わない。 ルイの家は、...
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ソルノワールへようこそ 2杯目 面談

営業終了前のソルノワールは、少しゆるくて、落ち着いている。 夕方の営業時間を終え、キッチンからは洗い物の音だけが響き、窓から差す光が店内に静かなリズムをもたらしていた。「村田。ちょっと時間いいか?」カウンターの中から声をかけてきたのは、店長...
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【ソルノワールへようこそ】1杯目 日常

【第1話  日常】 ここは、発展した商業施設から遠く離れた、駅近にある住宅街にポツンとある小さなカフェ『ソルノワール』。  陽の光りが広がる大きな窓。ダークブラウンのカウンター。 食器はすべてさりげないハンドメイド。昼下がりのソルノワールに...
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